フリーランスが経理をするには、インボイス制度の2割特例がとても便利です。
この制度は、毎年の消費税申告の度に選択するかどうかを決められる使い勝手の良さがあります。
また、インボイス制度には簡易課税という制度もありますが、卸売業の第1種事業者などを除いて、選択しない方が有利な場合が多いので注意しましょう。
今回は、令和5年1月20日に財務省から公表されたインボイス制度の負担軽減措置案のよくある質問とその回答に基づき、2割特例の基本的な事項と注意点を解説します。
2割特例制度とは
そもそも2割特例制度とは、小規模事業者が消費税税を申告納税する際に、年間の売上にかかる消費税の2割だけを計算して納めれば良いという制度でした。(税額控除後の経過措置と呼ばれることがあります。)
とても便利な制度なので、10月からインボイス制度が始まったら、ぜひ利用したいと思っているフリーランスも多いでしょう。この制度は、令和5年税制改革大綱で公表されたものです。くわしく改正内容を知りたい方は、次の記事をお読みください。
フリーランスが知っておきたい2割特例の基本
財務省の質疑応答集で明らかにされたポイントは次の3つです。
- 免税事業者があえて課税事業者になる場合のみ適用できる
- 適用できるのは4期だけ
- 消費税申告の度に選択するか決められる
どれも大切な内容なので、しっかり理解しておきましょう。
1.免税事業者があえて課税事業者になる場合のみ適用できる
2割特例制度を利用できるのは、これまでの免税事業者があえてインボイス発行事業者として課税事業者となる場合のみです。もともと課税事業者だった場合は利用できません。
令和5年10月にインボイス制度が始まるにあたり、フリーランスは課税事業者になるかどうかの選択を迫られています。法令では禁止されていますが、これまで大手の課税事業者から受注していたフリーランスが、課税事業者にならないと次のようなデメリットがあると言われています。
- 受注できる案件が減る(取引を見直される)
- 請負金額が消費税分減額される
このような厳しい状況を乗り切るため、課税売上高が1,000万円以下等のフリーランスが、必要ではないのに課税事業者になる事態が起こっています。そこで、国は約3年間限定で特例制度を設けたのです。残念ながら、インボイス制度が始まる前に、任意で課税事業者になってしまった場合には、2割特例は利用できません。
2.適用できるのは4期だけ
とても便利な2割特例ですが、適用できる期間はインボイス制度が改正されてから、4会計年度に限定されています。課税事業者に移行するための激変緩和措置といえます。
質疑応答集では、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間に適用されると明記されています。図を引用すると次のとおりとなります。
個人事業主の場合は、次の期間が対象となります。
- 令和5年10月〜12月までの3ヶ月分
- 令和6年分(1月〜12月)
- 令和7年分(1月〜12月)
- 令和8年分(1月〜12月)
令和9年1月からは、2割特例制度が利用できなくなるので覚えておきましょう。
3.消費税申告の度に選択するか決められる
一番のメリットは、2割特例制度を毎年選択するかどうか決められることです。
後出しじゃんけんともいえるでしょう。毎期消費税を申告をする際に、申告納税額を抑える方法を選択できるのです。図を引用すると次のとおりとなります。
消費税の課税事業者になる際には、課税事業者になるかどうかを選択します。
簡易課税は業種ごとにみなし仕入率が決められており簡便な方法ですが、2割特例制度との併用には注意が必要です。(後述)サービス業の場合のみなし仕入率は50%なので、消費税の申告納税イメージは次の図のようになります。
ここで大切なのは、原則どおり毎回消費税額を帳簿に記載して積み上げる本則課税(原則課税)と簡易課税・2割特例の3つを併用できない点です。一旦簡易課税を選択して、「簡易課税と2割課税」のどちらかしか選べない状況になってしまうと、本則課税が有利な場合でも選べなくなってしまいます。(ただし、事業年度内であれば、簡易課税の選択を取り下げられる規定あり。)
本則課税と2割特例の選択がベスト
結論からいうと、フリーランスが選択するには「本則課税と2割特例」の選択できる状態にしておくのが得策というのが私の考えです。一旦、簡易課税を選択してしまうと、期限内に取り下げする必要があるかもしれないからです。本則課税と2割課税を比較して選択すべき理由は次のとおりです。
- そもそも簡易課税より2割特例の方が有利
- 年によって、多額の経費がかかった場合には原則課税の方が有利となる
2割特例よりも本則課税の方が有利となる場合について説明します。
年間の経費が8割を超える場合や、事業が赤字となって消費税の還付を受ける場合には、本則課税が有利です。本則課税の仕組みは次のとおりでした。
消費税の計算は、受け取った消費税額から支払った消費税額を差し引いて計算します。
つまり、差し引きがマイナスなら支払った消費税が戻ってくるのです。設備投資など経費が特に多い年は注意が必要です。ただし、経費中、人件費は消費税が非課税なので、人件費を含めた経費が多額になった場合には本則課税が有利とならない場合があります。
将来の事業で、多額の経費が発生するかどうかは予想が難しいです。
本則課税と2割課税にしておいて、申告時にどちらか選択できる状態にしておくのがおすすめとなります。
TAKAHIRO FUTAKADO
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